扉
洞察力
谷 栄一
1
1兵庫医科大学脳神経外科
pp.313-314
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436200432
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最近の脳神経外科領域における診断および手術術式の進歩は顕著である.また,研究面における方法論も日進月歩の発展を遂げ,多岐にわたり細分化され,詳細な分析が出来るようになって来た.通俗なことながら,細分化されれば,それだけ綜合が必要なことはいうまでもない.
幸にして,国の内外を問わず,臨床および基礎医学における世界的権威の門をたたき,門下生として,または,指導を仰ぐため,話し合う機会を持つことが出来た.これら世界的権威に共通したものは,自然現象に対する鋭い洞察力であるという印象が強い.その印象を忠実に表現し難いが,卑近な例をあげると,臨床面では,患者の年齢,性別および現病歴をきいただけで,神経系のいかなる部位で,どのような種類の病態生理が初発時より現在までいかに進行し,どのような治療をすべきかが,次々と脳裡に展開されることである.血管写,気脳写およびスキャンなどは,その洞察力の展開の妥当性を裏付けるものに過ぎない.基礎医学方面では,例えば,組織標本をみて正確な診断がなされるだけでなく,標本に具現されている細胞および組織反応より,その裏に展開されている病理学的現象,さらに患者の臨床症状の適確な解釈,臨床家への助言まで発展する.細胞反応の解釈にしても,光顕レベルでの解釈であるに拘らず,電顕レベルで考えても少しも矛盾を感じないのである.ここでは,電顕が恰も臨床面での血管写などの補助診断法に過ぎないかの感がある.
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