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本号の「扉」には兵庫医科大学の吉村紳一教授から,「どうプレゼンテーションするか?」と題する原稿をいただいた.これから学会などで発表予定の若手医師には熟読することを勧めるが,改めて読み返してみると私自身もうなずく点が多々ある内容であった.プレゼンテーションとは,換言すれば自分の「知」を他人に伝える作業である.自分の思いをいかにわかりやすく,かつ公平な立場で他人に伝えることができるのかが,ポイントであることは言うまでもない.ソクラテスの言葉の1つとして知られているものに,「無知の知」がある.自分が無知であることを知ることにより他者より優位な立場になる,また同時に真の知への探求はまず自分が無知であることを知ることから始まるとの意味とされている.さらに付言すれば,「知」を得ることにより新たな「無知」の世界が広がることを知るべきであり,これによって科学の進歩がもたらされてきたと言っても過言ではない.獲得した「知」により何が知り得ないものとして浮上してきたのか,この点に言及することもよりよいプレゼンテーションの条件になるように思う.
「総説」ではglioblastomaとglioblastoma with oligodendroglial componentについて,著者らの経験症例の解析と文献的考察が述べられている.古典的な病理診断の意義を考えさせられる内容であったが,それはそれとして連載・脳卒中専門医に必要な基本的知識「脳梗塞慢性期外科治療」とともに読み応えのあるレビュー論文となっており,専門医試験受験生必読の論文である.また,「テクニカル・ノート」では,東北大学脳神経外科学教室が開発したパルスジェットメスの使用経験が述べられている.紙面のみではなかなか伝えきれない部分もあったかと思われるが,血管を温存しつつ髄膜腫の摘出を可能たらしめた本機器の有用性を示す内容であった.日本発の新たな医療機器として,さらなる発展を期待したい.これらの論文以外に,本号には研究1編,症例6編が掲載されている.いずれも内容の充実した力作であり,読者諸氏の興味の対象になることを確信する.
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