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本号の「扉」には,山崎麻美先生から「こどもの看取りの医療」と題する原稿をいただいた.自分の意思による決定が困難な小児,特に出生前に重篤な疾患を診断された新生児への対応は,倫理的あるいは法医学的にもさまざまな問題を含んでおり,極めて重い課題である.しかしながら,医学的に予後不良で生命が限られていることが明らかな場合には,患児への親の愛情を汲みながら尊厳ある最後を迎えるべく環境を整えることは,医療に携わる者として当然の責務であろう.そこにはさまざまな職種の人々の関与が不可欠であり,まさに「患者中心の医療」を「チーム医療」をもって実践することが求められている.
中川原譲二先生による総説「地域連携と脳神経外科」は,脳卒中をテーマにしたもので,大変に読み応えがある.基本的診療科である脳神経外科を専門とするわれわれは,実際に脳卒中の急性期医療から在宅医療まで幅広く活動している.そして,この急性期・回復期・維持期に至る脳卒中診療を円滑に行うためには,地域連携が必須であり,その前提として病院の機能分化が求められている.脳卒中医療における病院の機能分化に関しては,既にさまざまな取り組みがなされているが,その進捗度に地域格差があるのも事実であり,今後はその均てん化が全国レベルで推進されるものと予測される.このような状況のなか,脳神経外科医はその専門的知識と技術を生かして自らの果たすべき役割を見極める必要がある.田口明彦先生によるもう一編の総説「脳卒中患者に対する細胞治療開発」については,中川原先生の総説との対比が興味深い.脳梗塞に対する細胞移植治療は,現時点では確立された医療とはいえないが,そこに大いなる期待があるのも事実である.今後の発展を切望するものである.
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