書評
『脳科学のコスモロジー』幹細胞,ニューロン,グリア―藤田 晢也,浅野 孝雄●著
生田 房弘
1,2
1新潟大学・神経病理学
2新潟脳外科病院
pp.999-1000
発行日 2009年10月10日
Published Date 2009/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101035
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著者の1人藤田氏と私は,まったく同時代を共に脳に魅せられ今日に至った.藤田氏は,当初から脳の発生一筋に目を据えておられたように見えた.既に1960年代前半,「神経細胞もグリア細胞もマトリックス細胞に由来する」との一元論を立ち上げ,二元論一色の世界を相手に,着々とその証拠を自ら築き,堂々と主張を展開していかれた.
引き換え私は,神経病理学に魅せられ,同じ1960年代前半,ニューヨークで来る日も来る日もヒト疾患脳の観察を4年余続けただけで帰国した.以来,師,中田瑞穂先生の部屋で語ったことのほとんどはグリア細胞とニューロンの関係についてであった.私の4年余の経験は,脳病変をわれわれに教えてくれるのはグリア細胞をおいてないことなど,思うまま述べた.師の質問も繰り返された.意識についても話題にされた.やがて1971年,先生は神経細胞やグリア細胞,それぞれの研究ではなく“両者の相関”を解明してほしい,両者で脳の機能はつくられているのだと思うからと,その切々とした疑問を「Neuro-Gliology」と題し,そっと書き残された[新潟医誌85:667, 1971].
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