コラム:医事法の扉
第21回 「証拠隠滅罪」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.75
発行日 2008年1月10日
Published Date 2008/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100677
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刑法104条は,「他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し,偽造し,若しくは変造し,又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は,二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する」と,証拠隠滅罪を規定しています.まずここで,客体が「『他人』の刑事事件に関する証拠」となっていることに注意が必要です.「自分」の刑事事件に関する証拠を隠滅したり,偽造・変造したりしても,原則として,証拠隠滅罪には該当しません.というのも,犯人自ら証拠を隠そうとするのは,人間の自然な心情からする行為であって,それをあえて処罰したところで隠滅行為を減らせるわけではないからです.このような状況を,「期待可能性がない」といいます.
それでは,共犯の1人が証拠を隠滅した場合にはどうでしょうか.その証拠が「自分」の刑事事件に関すると同時に「他人」の刑事事件にも関するので問題となります.この点,判例・通説は,もっぱら「他人」のためにする意思で隠滅等した場合にのみ証拠隠滅罪に該当するとしています.
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