コラム:医事法の扉
第36回 「他科診療依頼」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.413
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100929
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脳神経外科関連の疾患は,高血圧症をはじめ,脂質異常症,糖尿病などの内科的疾患と密接に関係しており,患者が脳神経外科を受診することが適当であると信じていても,医学的にみれば,内科的治療を優先すべきことがよくあります.また,「頭痛」を主訴に脳神経外科を受診しても,実は耳鼻科的疾患や眼科的疾患が原因であるということもあります.そこで,われわれの日常診療においては,脳神経外科を受診した患者を脳神経外科以外の科に紹介する「他科診療依頼」が頻繁に行われています.診療所や小規模の病院では,診療情報提供書を作成し,他の専門医療機関を紹介しますが,総合病院では,多くの場合,同じ院内の他科に診療を依頼することになります.
それでは,この「他科診療依頼」の場合の法律関係はどうなるのでしょうか.判例・通説によれば,あくまで患者と病院との間の診療契約(民法656条,準委任)ですから,担当医は診療契約を遂行するための「履行補助者」に過ぎず,たとえ同じ院内の他科の医師に依頼したとしても履行補助者が増えるだけであって,診療契約には何ら影響を及ぼさないと考えられます.また,依頼された医師は,病院(あるいは,国または地方公共団体)との雇用契約に基づき,診療行為を適切に行わなければなりません(民法644条)し,医師法等所定の義務を負うことになります.
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