コラム:医事法の扉
第35回 「ADR」
福永 篤志
1
,
河瀬 斌
1
1慶應義塾大学医学部脳神経外科
pp.309
発行日 2009年3月10日
Published Date 2009/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100914
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ADRとは,alternative dispute resolutionの略で,直訳すると「代替的紛争解決」となりますが,最近は「裁判外紛争解決」の総称として汎用されています.「裁判外」というと,「示談」を連想しますが,示談は,主として当事者同士で話し合い紛争を解決する手段であるのに対し,ADRは,原則として,ADR機関(個人を含む)という,中立的第三者機関を介して紛争解決を行うもので,「訴訟手続によらずに民事上の紛争の解決をしようとする紛争の当事者のため,公正な第三者が関与して,その解決を図る手続」と定義されています[「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(通称ADR法)1条].
裁判所ホームページによれば,医事関係民事訴訟の平均審理期間は,23.6カ月(2007年度)であり,1993年度の42.6カ月の約半分に短縮されてはいますが,未だ約2年もかかることがわかります.この裁判期間をさらに短縮し,当事者の負担軽減や,訴訟費用の減額,そして,紛争解決に対する満足を得るためにもADRは期待されています.特に医療は事故が不可避で,そのため患者側の期待が裏切られることが多く,紛争もまた不可避に生じることから,どの分野にも先駆けてADRに期待がかかっています.
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