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Ⅰ.はじめに
海綿状血管腫(cavernous angioma,cavernous malformationあるいはcavernoma,以下CA)は中枢神経系のどこにでもできることが知られ,発生頻度は人口の0.1~0.5%とされている14).Lobatoら12)によれば,脳血管撮影で発見されない血管奇形245例のうち44%を占めるのはarterivenous malformation(以下AVM)であり,CAは31%で,10%がvenous malformationであるという.CAの70~80%を占めるテント上のものは難治性てんかんの原因病変であり,自験例から,側頭葉内側部や側頭葉新皮質あるいは運動野近傍皮質のCAはてんかんを発症しやすいと考えている11)が,てんかん発症は前頭葉,側頭葉のCAに多いという報告がほとんどである1,15).てんかん発症の頻度は11~80%と報告によってまちまちである1,2,5,12,14).CAを有する患者の1年間におけるてんかん発症のリスクは0.7%15)あるいは1.51%5)であるという.出血のリスクをCAごとにみると,単発性病変例では1.34%であるが多発病変例では2.48%と後者のほうが明らかに高い5).てんかん以外には脳内出血や局在性神経症状や慢性頭痛などが報告されている1,2,4)が,magnetic resonance imaging(以下MRI)で無症候性のCAが20%近い例に発見される5).時として,多発性(10~24%4,5))であり,多発性のCAの1/3には家族性が認められ4),常染色体優性遺伝と考えられている.Rigamontiら14)は家族例が54%と多いことを報告しているが,CAを有する83%の家族は非症候性であったという.家族性を有する例は多発性CAが特徴的で,発症年齢も若い.近年遺伝子解析が盛んに行われて成果が報告されている.これまでに,CCM1(7q),CCM2(7p),CCM3(3q)という3つの遺伝子がポジショナルクローニングされており,家族例の40~50%はCCM1遺伝子が原因であるという13).さらにはCAの発症においてもtwo-hit mechanismという機序が最近確認されている7).これは,CCM遺伝子が両親からコピーされると胚細胞での突然変異は致死的になるが,突然変異がヘテロの場合にCAになりやすくなり,実際にCAが病変として発育するためにはその部位における2番目の体細胞突然変異(second hit)が必要であるという説である.
AVMの3大症状は,出血(43.4%),頭痛(24.9%),てんかん発作(17.3%)であるという20)が,てんかん発作が33%10),30%8)にみられたという報告もある.また,Hohら10)の424例のAVM患者についててんかん発作を有する141例とそうでない群の比較検討で,前者は男性が有意に多いこと,頭蓋内出血のない例が多いこと,AVMの大きさは3cm以上が多いこと,側頭葉に有意に多いこと,全般性強直間代発作が多いことが明らかにされた.治療後の発作消失率は66%と良好で,手術までの期間が短い群,頭蓋内出血がある群,全般性強直間代発作を持つ群,脳深部や後頭蓋窩局在の群,ガンマナイフや血管内手術の群より直達手術を行った群,AVMが完全に消失した群で,それぞれ発作消失率が有意に高かった10).AVMの局在により発作型が異なり,側頭葉やローランド溝近傍は部分発作が多く,前頭葉やシルビウス裂近傍の局在では全身けいれんが多いという8).AVMの術後にてんかん発作が起こる頻度は21%であるという18).
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