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はじめに
脳幹には意識の中枢があり,かつてはno man's landと呼ばれ,手術不可能な領域とされていた。近年の画像診断技術の進歩によって病変の詳細な描出が可能となるに伴い,海綿状血管腫(cavernous malformation, cavernous angioma, cavernoma)や良性グリオーマなどの境界明瞭な病変については,手術摘出が行われるようになってきた。中でも脳幹部海綿状血管腫の治療がこの部位の手術法開発を大きく前進させたと言える。解剖学の教科書によると,本来脳幹とは外套と小脳を取り除いた残りの部分を指し,大脳基底核や視床も含まれるが,本稿では臨床で広く用いられている中脳・橋・延髄を扱うものとする。
海綿状血管腫はいくつかの英語表記があるように,血管奇形と呼ぶべきとする説もあり,またそのほうが実態に近い。大脳半球のものでは,痙攣発作や出血で発症する。脳幹部海綿状血管腫では痙攣発作はないが,重要な神経核や神経路が密集しているため,小さな出血でも症状が顕在化しやすいという特徴を持つ。いずれにしろ,出血を繰り返すことにより症状の増悪と緩解を繰り返しながら段階的に悪化する。画像診断ではCTやMRIが有力である。特にMRIでは,複数回の出血を反映するmixed intensity lesionやblack dotとして描出される。通常の脳血管撮影では描出されない。
脳幹の海綿状血管腫は,年間出血率2.4~5.0%,年間再出血率5.0~30%と他部位のものよりも出血率が高いと考えられている1,2)。したがって,大脳半球のものと比較すると手術摘出を考慮しなければならないものが多い。一方で脳幹の手術であるので,その適応については慎重に判断されなければならない。多くの報告では,血管腫が脳表に顔を出しているか脳表に近く,繰り返す出血で症状が進行しているものが手術適応とされる1-4)。本稿では,手術を見据えた脳幹の解剖学的特徴と,現在われわれが行っている手術計画の工夫について考察する5,6)。
Abstract
We reviewed the surgical anatomy,different approaches to the brainstem,surgical indications and techniques that can be applied for the treatment of brainstem cavernous angioma. We also demonstrated the usefulness of surgical simulation with three-dimensional fusion imaging by presenting two surgical cases of brainstem cavernous angioma. Intraoperative monitoring of somatosensory evoked potential (SEP) and motor evoked potential (MEP) was useful in predicting postoperative neurological deficits. A brainstem incision should be made at a point where the angioma and hematoma are closest to the brainstem surface.
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