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Ⅰ.はじめに
てんかん原性病変のなかで,腫瘍性病変はMRIで明らかな局在病変として認められ,てんかん外科の中でも,最も発作転帰が良好なものとして注目されている.腫瘍性病変は限局性皮質形成異常focal cortical dysplasia(以下,FCD)に次いで多く,難治性部分てんかんの10~30%に見つかるという22).また,側頭葉腫瘍の91%はてんかんで発症し,71%は難治性であるという報告がある20).種類はいろいろであるが,胚芽異形成性神経上皮腫瘍dysembryoplastic neuroepithelial tumor(以下,DNT)や神経節膠腫ganglioglioma(以下,GG)などのmixed neuronal-glial tumorと,astrocytoma(以下,Astro)やoligodendrogliomaなどの良性のgliomaに分けられる.DNTは,難治性てんかんの原因として1988年にDaumas-Duportら4)によりはじめて報告されて以来注目され,治療成績の極めて良好な腫瘍という認識で一致している.FCDが前頭葉に多いのに比べて,腫瘍性病変は側頭葉に多い傾向がある.Gliomaもてんかん外科で扱うのは極めて良性のものであり,てんかん発症からの経過期間が長いのが特徴である.治療戦略を考慮する場合に最も大切なことは,MRI診断であり,FCDとの鑑別診断が重要である.つまり,FCDは病変そのものがてんかん原性を有しており(本連載第1回10)参照),その他の腫瘍性病変はその周辺部分にてんかん原性焦点が存在するからである.また,腫瘍性病変の病理診断において,腫瘍性病変にFCDが併存して認められることが少なくないことも明らかになってきている9,12,16,19,24).したがって,腫瘍性病変のてんかん原性は併存する FCDによる可能性が大きいと考えられる.腫瘍性病変と胎生期に形成されると考えられるFCDがなぜ併存するのか,GGとDNTの複合がなぜ生じるのかなど,過誤腫的あるいは異形成的な性格を示唆する論文もある16)が,病理学的研究はこれら良性の腫瘍性病変の発生やてんかん原性獲得機序の解明に手がかりを与えるかもしれない.
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