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Ⅰ.はじめに
内側側頭葉てんかん(mesial temporal lobe epilepsy:MTLE)は,比較的画一的な臨床的特徴を有し,病理学的に海馬硬化(hippocampal sclerosis:HS)を伴う症候群として捉えられている29).MTLEは薬物治療よりも外科治療が著効を示すというクラスⅠエビデンスを有する唯一のてんかん症候群として知られている28).てんかん外科の歴史のなかでも最も多くの症例に手術が行われ,海馬と扁桃体を含む側頭葉内側構造を切除するという手術戦略は確立され,発作消失率も80%に達している.画像診断が十分でなかった時代から,MTLEが病理学的にHSを基盤とする病態を有していることが注目されていた23).HSは神経細胞の脱落とグリオーシスによる海馬の萎縮を特徴としているが,海馬のみならず嗅内皮質や海馬傍回,扁桃体にも硬化所見が認められることから内側側頭葉硬化(mesial temporal sclerosis:MTS)とも呼ばれる.HSとMTSはほぼ同義として用いられているので本稿ではHSを用いることとする.Magnetic resonance imaging(MRI)の導入以降,MTLEの確定診断に海馬の萎縮や硬化所見の有無を判定することが盛んに行われている.MTLEの概念と画像診断の要点,切除標本におけるHSの診断分類と術後の発作転帰との関係について解説する.本稿で取りあげるHS病理分類はてんかん術前術後評価の標準化に必要なものと考えられる.WylerらのHS病理分類(1992)30)の欠点を補う新分類としてWatsonらのHS病理分類(Table 1)が1996年に発表され,MRIによる海馬容積の定量的測定結果とよく相関することが示された27).われわれは独自の定性的な海馬硬化診断とこのWatson分類を対比検討し,その有用性について検証した.さらに発作転帰などの臨床データと対比検討することによって,MRIによる海馬硬化診断が発作転帰の予測に有用かどうかも明らかにした.海馬硬化と海馬以外のてんかん原性病変が併存する症例もあり,このような場合をdual pathology と呼ぶが,本稿ではこれ以上言及しない.
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