Japanese
English
総説
成人成長ホルモン分泌不全症(成人GHD)―疫学,病態,診断,治療
Adult Growth Hormone Deficiency: Its Etiology,Pathophysiology,Diagnosis,and Treatment
有田 和徳
1
,
平野 宏文
1
,
富永 篤
2
,
栗栖 薫
2
Kazunori ARITA
1
,
Hirofumi HIRANO
1
,
Atsushi TOMINAGA
2
,
Kaoru KURISU
2
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態制御外科学(脳神経外科学)
2広島大学大学院医歯薬学総合研究科先進医療開発科学講座脳神経外科学
1Department of Neurosurgery,Graduate School of Medical and Dental Sciences,Kagoshima University
2Department of Neurosurgery,Graduate School of Biomedical Science,Hiroshima University
キーワード:
growth hormone deficiency
,
replacement
,
hypothalamo-pituitary tumor
,
head injury
,
QOL (quality of life)
Keyword:
growth hormone deficiency
,
replacement
,
hypothalamo-pituitary tumor
,
head injury
,
QOL (quality of life)
pp.217-230
発行日 2007年3月10日
Published Date 2007/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100425
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Ⅰ.はじめに
成長ホルモン(growth hormone,GH)の作用は,①軟骨形成と骨形成の促進,②タンパク合成促進,③筋組織の成長,④脂肪分解,⑤肝臓からのグルコース放出,⑥インスリンに対する拮抗作用,⑦カルシウムの消化管吸収促進,⑧カリウム,ナトリウム,水排泄の減少,⑨肝細胞におけるIGF-1産生促進,⑩性成熟促進作用,⑪心理面での健康感の維持,など多岐にわたっている6,38).小児期では骨や軟骨の形成,筋肉の発育が主体となるため,成長ホルモン分泌不全(growth hormone dificiency,GHD)では,成長障害を呈することとなる.一方,成人における成長ホルモン分泌不全症(成人GHD)でも上記諸作用の欠損によって,多彩な症状,徴候を呈し,QOL(quality of life)も障害される.また,GHD患者では心血管系疾患による死亡率が対照群に比較して高くなることが報告されている30).
かつてはGHDに対する治療は下垂体性小人症に限られていたが,リコンビナントGHが大量に産生されるようになって以降,欧米では10年以上前から成人GHDに対するGH補充療法が行われており,代謝異常の改善,QOLの改善効果が相次いで報告されている.本邦でも2006年4月から,GH補充が成人GHDに対しても保険適応となった.一方,成人期に発症するGHDの大部分は,間脳下垂体腫瘍や頭部外傷などの脳神経外科疾患が原因である.このため,われわれ脳神経外科医も本病態に関して十分な知識を有し,必要に応じて患者や家族に説明することが必要となっている.本稿では,成人GHDの,疫学,病態,診断,治療について概説する.
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