Japanese
English
総説
DNAメチル化剤temozolomideの分子薬理学
Molecular Pharmacology on DNA Methylating Agent Temozolomide
廣瀬 雄一
1
,
佐野 公俊
1
Yuichi HIROSE
1
,
Hirotoshi SANO
1
1藤田保健衛生大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery,Fujita Health University
キーワード:
temozolomide
,
O6-methylguanine-DNA methyltransferase
,
DNA mismatch repair
,
G2 checkpoint
Keyword:
temozolomide
,
O6-methylguanine-DNA methyltransferase
,
DNA mismatch repair
,
G2 checkpoint
pp.117-129
発行日 2007年2月10日
Published Date 2007/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100412
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.はじめに
悪性グリオーマは外科的手術による根治は困難であることが多く,その治療のうえでは化学療法と放射線療法を中心とした補助療法の併用が多くの場合行われている.しかし,現状では同腫瘍の根治に向けた有効な補助療法が確立しているとは言えず,治療開始後約1年以内に再発あるいは進行が認められるため,その有効性を改善することが必要である19).従来,グリオーマに対する化学療法の中心的薬剤はニトロソウレア製剤であったが,その効果は決して満足できるものではなかった.これに対して,1990年代後半に新世代DNAメチル化剤temozolomide(TMZ)8,63)が再発グリオーマに対する治療に導入されて好成績を挙げたことが欧米から報告されたことは,近年におけるグリオーマ治療のうえで大きな進歩の1つと考えられる.同剤は,放射線療法とニトロソウレア製剤による化学療法を施行した後の再発膠芽腫症例の半数以上において進行抑制を含む何らかの治療効果を示し7,68,96),従来の化学療法剤と比較すると骨髄抑制が弱く,しかも経口投与可能な薬剤であるため外来診療により治療を続けやすいという点からも,臨床的な有用性が注目された66).本邦においても2006年9月に認可され,今後,悪性グリオーマ治療における中心的薬剤となる可能性が高い.
本稿では,TMZを用いた悪性グリオーマ治療の可能性と限界についての理解を通じてさらに治療法の進歩することを期待して,同剤に関する主に薬理学的,細胞生物学的な知見を紹介する.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.