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Ⅰ.はじめに
近年の脳腫瘍治療では,X(γ)線を用いた単独放射線治療または術後照射がしばしば用いられている.腫瘍のX線照射に対する反応は,腫瘍組織特有の放射線感受性や浸潤性,また分割照射と単回照射,局所照射と拡大局所照射など治療の方法によって異なる.一般に,限局性の腫瘍組織に対する生物学的効果が線量依存性であれば,周囲正常組織の耐容線量の範囲で高線量の治療を行えば,局所制御とともに機能予後の改善や生存期間延長が期待できる.したがって,近年の脳腫瘍に対する放射線治療は,線量集中性の向上と高線量治療をの課題を両立すべく発展してきたといえる.この目的に適う放射線治療機器であるライナックやガンマナイフを用いたstereotactic radiosurgery(SRS),stereotactic radiotherapy(SRT)や強度変調放射線治療intensity modulated radiotherapy(IMRT)などの手法が開発され,さらにサイバーナイフ21)やtomotherapyでの治療も取り入れられてきている.良性腫瘍や周囲正常組織の放射線感受性が高い場合には必ずしも高線量が適さない場合があるが,転移性脳腫瘍や頭蓋内髄外腫瘍などでは線量集中性に優れたこれらの手法が極めて有効である.
悪性グリオーマに対する補助療法としてX線分割照射治療の有効性が認められており1,12,38,43,44),膠芽腫では60Gy程度までの治療で生存期間の延長と線量依存性が示されている2,45).悪性神経膠腫に対する外科的摘出により局所脳神経症状や頭蓋内圧亢進症状の改善,病理組織診断の確定に基づく治療方針の決定,腫瘍容積を減ずることにより以後の治療を行いやすくすることが期待でき,手術摘出量と予後の間には相関がみられる15,31).しかしながら,悪性神経膠腫は浸潤性で高い増殖率を示すため外科的摘出のみでの腫瘍制御は困難で,放射線治療,化学療法,免疫療法その他を組み合わせた集学的治療を追加して行うのが一般的である.これら集学的治療によっても局所制御が困難であるうえ浸潤部位から容易に再発を来す結果8,39),膠芽腫での生存期間中央値は8~14カ月程度2,5,45)であり,ここ20年間で大きな改善は得られていない.浸潤部や播種に対する広範囲の治療としてX線全脳照射が検討された時期もあったが,局所照射と比較して生存期間の延長は得られず,副作用の面からもその有用性については否定的な結果が報告されている16).1980年代以降に行われた多分割照射や密封小線源治療の観察から,この腫瘍の局所制御には概ね90~100Gyが必要とされるが31),浸潤部位からの再発により高線量治療による局所制御がただちに生存期間延長に結びつくというevidenceは得られておらず,この点で神経膠腫の放射線治療の課題は限局性腫瘍と異なる.
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