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I.はじめに
近年,神経組織の脳内移植が注目を集めている。基礎医学的立場からは,host脳を理想的培養環境として用いることによって,神経の再生・成長の機序を解明する手段として利用され,臨床医学的立場からは,失われた脳機能を移植によって回復させる目的で研究が進められている。われわれは臨床医学的立場から,パーキンソン病・アルツハイマー病に対する神経組織の移植に関する実験を行なってきた。神経組織を脳内移植するさい,donorとして1)胎児脳,2)異種動物脳,3)自家組織が考えられる。胎児脳は失われた神経細胞に相当する細胞を移植でき,かつ成長段階にあるため新しく神経回路網の形成が期待できることから,最も理想的なdonorと考えられる。しかし臨床応用を行なうとなると倫理上の問題がある。つまり胎児脳をどこからどのようにして入手し,誰に移植するのかという問題である。異種動物脳の移植は当然のこととして免疫上の問題があり,さらに倫理上の問題も見逃せない。
そこで考えられるのが,脳以外の自家神経細胞を移植することである。その代表として副腎髄質細胞と末梢神経節が考えられる。Parkinson病におけるドパミン細胞の代役として副腎髄質細胞の移植が考案され3),ついに臨床応用されるに至った1)。
Peripheral sympathetic and parasympathetic ganglia were transplanted to supplement catecholamine and acetylcholine in the brain with Parkinson and Alzheimer diseases, respectively.
1. Transplantation of the superior cervical ganglion into the caudate nucleus of MPTP-induced parkinsonism monkey.
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