Japanese
English
総説
発声と構音のメカニズム
Mechanism of phonation and articulation.
廣瀬 肇
1
Hajime HIROSE
1
1東京大学医学部音声言語医学研究施設
1Research Institute of Logopedics and Phoniatrics, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.380-388
発行日 1986年4月10日
Published Date 1986/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905790
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I.はじめに
発声と構音は人間のことばによるコミュニケーションの基本となるもので,複数の器官が関与し,しかも時間的空間的に高度の協調性を要する複雑な統合運動(integrated movements)である。とくに構音はヒトに固有の機能であって大脳の知的機能と密接な関連を持ち,言語の習得と並行して生後の学習により形成される熟練運動である。このため末梢,中枢をとわず構音のメカニズムの研究に動物実験が用いにくいという事情があるなど,構音運動は四肢の運動とはかなり異なった性格を持っている。
一方ヒトの発声については,他の哺乳動物と共通の要素があり,実験的なモデルによってそのメカニズムをある程度探ることが可能であると考えられる。しかし,発声にしても単なる運動機能というばかりでなく,感情表出の一面を荷いうることや,さらにヒトのコミュニケーションにおける韻律的特徴(prosodic features)の制御に関係している点など,やはり複雑な要素を含んだ運動機能であることは否定できない。
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