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I.はじめに
免疫学的受容体疾患として把握する病因論が定着した重症筋無力症は,骨格筋ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)を標的とする抗体を中心にすえ,4つの発症機構すなわち抗体による①AChRの生理活性の直接阻害,②AChR崩壊促進(2価抗体によるcross-linking),③補体介在性細胞性反応,④細胞介在性細胞性反応によって,その病態が解明されてきた。しかし,発症の引き金が何であるかの問題が未解決であるばかりでなく,上述のとおり成因の主役とされる抗AChR抗体もその実測値は臨床像と必ずしも相関しないのが現状であり,対応する受容体蛋白サブユニット構造の解明から,結果を還元した抗体サブクラスとそれぞれの作用機序解析の努力が続けられている。本病の本態にせまる研究の糸口が,抗体産生の免疫学的背景や遺伝子機構に求められることは,当然かつ重要なことであるが,本病の主座が受容体蛋白にあるかぎり,AChRを標的とする多様な免疫学的機序の一層の解析とともに,そのあとに展開するプロセス,すなわちAChRの代謝回転とその周辺機構の解析も無視できない研究分野と考えられる。また,本病が筋肉側受容体疾患であるとしても,autoreceptorの概念を導入すれば,シナプス病としての本病の解明には,transmitter遊離を司る神経終末機能が,免疫反応の修飾を受けてどれだけ病態の修飾にあずかるかを評価することも重要であろう。一部に組織培養やモノクローナル抗体産生細胞株を用いた自験成績を中心に,これらの問題を以下に概説する。
Immunological properties of AChR in relationto the pathogenesis of myasthenia gravis
The decrease in number of acetylcholine receptor (AChR) at the neuromuscular junction is sufficient to account for the typical clinical and electrophysiological manifestations of myasthenia gravis (MG), and the pathogenesis of this abnormality involves an autoimmune attack against the AChR. In line with this, a humoral immune mechanism has been shown to be implicated in this disease, particularly in the accelerated degradation of AChR by antibodies, and antibody-dependent, complement-mediated lysis of the endplate membrane.
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