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1.α-Bungarotoxin
Elapidae (コブラ,クライトなど)や,Hydro—phidae(ウミヘビ)の毒が,四肢呼吸筋麻痺をおこす作用のあることは古くから知られ,いわゆる神経毒(neurotoxins)によるものとされて来た。最近,作用機序が明らかにされるにつれ,これら蛇毒は大別して2つのグループに分けられている。第1のグループは,クラーレ類似の抗脱分極作用で,運動終板膜側に働いて神経筋伝達をブロックするものである。Cobra neurotoxins,sea—snake neurotoxins,アマガサヘビ(Bungarus mul—ticinctus)から抽出されるα-Bungarotoxin(α-BuTX),エラブウミヘビから抽出されるErabu—toxins (田宮,1966年),その他大半のelapidneurotoxinsがこれに属する。β-Bungarotoxinで代表される第2のグループが,神経終末側に作用して,アセチルコリン遊離を阻害し,神経筋伝達ブロックを招来するのと対照的である1)。この中,α—BuTXは1970年以来,電気ウナギのニコチン性アセチルコリン受容体(AchR)と特異的に結合し,特異的にラベル出来ることが報告され2,3),生化学的研究の糸口とされたため,特に注目をあびているが,研究の内容,方法によつては同グループの他の蛇毒がより有用な場合もある。たとえば,AchR抽出に当つては,比較的結合の弱いErabutoxinやCobrotoxinの方が用いられる。
われわれが用いているα-BuTXは,CM-Sephadex C-25またはC-50でカラムクロマトグラフイを施行し,CM-SephadexまたはCelluloseで再クロマトグラフィを行つて,Bungarus multi—cinctusより抽出精製したものである。分子量7983,5つのS-S結合でcross-linkした74個のアミノ酸残基をもっsingle polypeptide chainから成つている4)。その生理作用を家兎前脛骨筋(in vivo),ラット横隔膜筋(in vitro)で調べると,前者では筋直接刺激による誘発筋活動電位は不変であるが神経刺激によるそれは反復刺激でwaningがみられる(Fig.1上段)。後者ではコントロールに比べ,自発性微小終板電位(M.e.p.p.)の振幅は約1/3に低下するが,その放電頻度および静止膜電位には有意義の変化をみとめない(Fig.1下段)。また,クラーレ,アセチルコリン,カルバコール,コリンなどで前処置すれば,AchRに対するtoxin-bindingは阻止されるし2,3),Autoradiography5),あるいはImmunoperoxidase染色6)でα-BuTXが終板膜に選択的に集積することも確かめられている。これら諸事実は,α-BuTXおよび類縁のα-neurotoxinsが,特異的なAchRマーカーとなりうることを示唆している。
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