Japanese
English
特集 瞳孔のすべて
瞳孔の博物誌
Natural history of vertebrate pupils
岩田 誠
1
Makoto IWATA
1
1東京大学医学部脳研究施設臨床研究部門神経内科
1Department of Neurology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine University of Tokyo
pp.704-709
発行日 1985年10月10日
Published Date 1985/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905725
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I.はじめに
脊椎動物の眼には虹彩があり,通常はこれが水晶体の前面を覆っている。虹彩のほぼ中央部にある開孔部が瞳孔であり,網膜に達する光量の調節は,瞳孔の開口度の大小によって営まれている。瞳孔の開口度を変化させる作用を有するのは,虹彩の中にある瞳孔括約筋(縮瞳筋)と,瞳孔散大筋(散瞳筋)であり,後者が最大限に作用した状態では,どのような動物においても,瞳孔はほぼ円形に近い形に散瞳することが多い。しかし括約筋が作用して縮瞳してくると,瞳孔は動物によってきわめてさまざまな形をとるようになる。このような形態の差が生ずるのは,括約筋の分布が均一か不均一かによるものであり,瞳孔周囲に沿って同心円状に均一に分布する場合には瞳孔の形は円形となるが,上下,または左右に不均一な分布を示す場合には,瞳孔の形が歪んでくる。瞳孔の上下のみに括約筋のある場合には,瞳孔は横長の形となり,左右の部分のみに存在する時には,縦長の瞳孔となる。これに加えて,瞳孔の一部分に括約筋が欠如していたりすると,複雑な形をした瞳孔が形成されることとなる。ここではまずさまざまな動物における瞳孔の形態につき記述し,次いで瞳孔の形態の意義につき考察を加えたい。
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