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I.はじめに
社会を構成する人口の高齢化は,年々進行し,ボケ老人の増加,その底辺に横たわる知能低下老人の増加はますます社会的に重要さを加えつつある。脳の加齢は,生を享けたすべての人にとって重大事である。この問題の医療的解決は,医学に課せられた緊急かつ恒久的課題である。
一方において,近代医学の出発とともに分析的に発展してきた医療は,こと志と違い,近年,社会の重大な不信を招くに至っている。それは多くの医師が,心臓,肝臓,腎臓,肺などの専門技術者に変わり,人格を持った丸ごとの人間をみる医師が遂にほとんど消えてしまったための医療への不信であり,これは社会にとって大きな不幸である。近年におけるX線コンピューター断層装置(X-CT),核磁気共鳴コンピューター断層装置(NMR-CT),陽電子(ポジトロン)コンピューター断層装置(P-CT)などの開発と普及は,生きている人の脳の体積,病態生理,機能などを定量的または定性的に把握することを可能にした。元来、心臓だけ,肺だけ,肝臓だけといった人間は存在しない。われわれは加齢による脳の萎縮とその促進因子,さらにその機構に関する研究をすすめることにより,今まで分析的に発展してきた医学,医療を,脳を中心とした丸ごとの人間の医学,医療にまで高めることができると信じている。
Age-related brain atrophy was investigated in thousands of persons with no neurologic disturbances using X-CT and NMR-CT and following results were obtained.
1) Brain atrophy was minimal in 34-35 years old in both sexes, increased exponentially to the increasing age after 34-35 years, and probably resulted in dementia, such as vascular or multi-infarct dementia. Brain atrophy was significantly greater in men than in women at all ages.
2) Brain volumes were maximal in 34-35 years old in both sexes with minimal individual differences which increased proportionally to the increasing age.
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