明日への展開 ADVANCED TECHNOLOGY
I.診断・検査技術
NMR-CTの原理とその現状
清水 哲也
1
,
田中 邦雄
2
Tetsuya Shimizu
1
,
Kunio Tanaka
2
1旭川医科大学産婦人科学教室
2旭川医科大学実験実習機器センター
pp.228-233
発行日 1984年4月10日
Published Date 1984/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206964
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X線CTの出現以来,超音波診断装置をはじめ,ポジトロンエミッションCTやディジタルX線法など多数の画像診断法の改良,開発が進められ,その進歩,普及には目覚しいものがある。さらに最近では,これまで臨床医学領域では全く無縁の技術であった核磁気共鳴法(nuclear magnetic resonance:NMR)を利用して,X線CTと同様の断層像を得るNMR-CT装置が国内・外で開発が進められ,新しい画像診断法として大きな関心を集めている1)。
NMRは1946年にBlochらおよびPurcellらにより,それぞれ独立に観察された現象である。これまで,有機化学の分野を中心に液体や固体の分子構造の解析や物質の同定などに広く利用されてきた。本法は原子核を一様な静磁場中に置き,これに弱い電磁波(X線よりもはるかに波長の長いラジオ波が用いられる)を照射し,そのエネルギーの吸収を観測する分光学的測定法の1つである。原理的に細胞や組織に対して非破壊的な測定法であり,かつ生体内に自然に存在する原子核(たとえば生体水分中のプロトン:1H)による生化学的情報が無侵襲で得られる。したがって,X線CTで得られる形態学的情報だけでなく,機能的情報をも知り得る点で,これまでの診断法にない多くの可能性を有している。NMRはX線とは異なり,医学領域に基盤のない技術である。
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