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I.はじめに
軟口蓋ミオクローヌス(Palatal Myoclonus,以下,PMと略す)は,軟口蓋を中心に出現する律動性不随意運動である。出現部位が咽頭・喉頭・横隔膜に及ぶ場合,軟口蓋・咽頭・喉頭・眼球・横隔膜ミオクローヌス(le syndrome des myoclonies vélo-pharyngo-laryngooculo-diaphragmatiques,Guillain et Mollaret 1931)と呼ばれることもある。しかし,現在は,軟口蓋に限局せず,いわゆる鰓弓由来筋に広がるものも含めて広い意味でPMと呼ばれている。
PMの存在は古くは19世紀から,主に耳鼻咽喉科医によって知られていた。PMに伴って患者本人あるいは周囲の人に聴取されるクリック音の起源を求めることに,その研究のスタートがあった。初め鼓膜張筋ないしEustachio管開口部の不随意運動に基づくものであることが指摘され(Müller 1837,Politzer 1862:文献50による),19世紀後半には,PMとその責任病巣としての器質的病変の存在,すなわち,小脳腫瘍,延髄踵瘍が関連をもつことが報告されていた。20世紀に入って,Foix以来のフランス学派の研究は,現在我々の持っているPMに関する症候学的・病理学的知見の大部分をもたらしたといっても過言ではない。中でもGuillain et Mollaretの業績は特に重要である。
Palatal myoclonus (PM) is the important sign which indicates the existence of brainstem lesion, particularly involving Guillain-Mollaret's triangle. It have some remarkable features distinguishing from well-known Parkinson tremor. As compared with its well-defined pathology, its pathophysiology are still unknown. In this paper, the semiological and pathological features of PM were reviewed at first. Then, based on our experience, pathophysiology of PM was discussed.
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