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はじめに
大脳の損傷によって言語機能の障害が起こった人の言語機能の回復を記録した文献は,失語症が確立する以前から見られる。失語症が19世紀において原因や言語症状が明らかになるにつれて,遡って失語症と推定できるそれ以前の症例報告が検討された。古代や中世紀までの記録については信頼性に多少とも疑問があるが,17世紀,18世紀の文献には比較的,明確に原因や言語症状が記載され,中には,言語症状の改善の経過を述べたものがある1)。19世紀以後は現在に至るまで,失語症の研究が進むにつれて,数多くの失語症の言語機能の回復あるいは改善の成果,あるいは改善の限界の問題などが報告されている2)。最近ではCT・スキャンの普及によって,大脳の病巣の部位,拡がりと言語症状の関係が詳細に検討できるようになり,失語症のタイプや重症度と病巣,病巣を含む大脳萎縮の所見と言語症状の経過,各言語モダリティの変化と病巣の関係などが次第に明らかになりつつある。また局所脳循環の測定ができるようになり,言語の受容,表出と大脳における局所脳血流量の変化,失語症者の局所脳血流量の特徴ならびに言語機能改善との関係なども判明してきた。失語症者に対する言語治療(訓練)が今世紀に入って盛んに行なわれるようになり,最近では全く治療(訓練)が行なわれない症例はない時代を迎えつつある。
Abstract
The recovery process in aphasia has been studied since the 18-19th centuries. Its objective assessment is advanced today by development of various test batteries for comprehensive evaluation of language function. CT enables us to examine the correlation between localization and aphasic symptoms more precisely, although the mechanism of recovery language function is complex and exceptional cases are not uncommon. Among several factors influencing the recovery process are age, handedness, size and site of lesion, and etiology.
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