Japanese
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特集 睡眠
サーカディアン・リズムの生理学
Physiology of the circadian rhythm
川村 浩
1
Hiroshi Kawamura
1
1三菱化成生命科学研究所脳神経生理研究室
1Laboratory of Neurophysiology, Mitsubishi-Kasei Institute of Life Sciences
pp.996-1006
発行日 1981年10月10日
Published Date 1981/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905329
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I.リズム発生の機構
ヒトにほぼ1日の周期を持つ固有のサーカディアン・リズムが存在することは以前から知られている。Kleit-manらは被験者を洞穴の中で暮させて外界の時間の手がかりを与えないようにした。このような状態でも被験者の睡眠や体温などの生活機能に24時間に近い一定の周期を持ったリズムが現われた。このように外部環境から時間の手がかりを与えられない状態で自由継続(freerun)するリズムの存在は,体内時計が備わっていることを示す証拠と考えられる。
サーカディアン・リズムについては多くの現象の観察が古くから積み重ねられてきた。しかしその体内機構の研究は1950年代にまずゴキブリで行なわれた。英国のHarkerはゴキブリの体内時計が神経分泌細胞を持つと考えられる側心体にあり,それがペースメーカーとなってもう一つの時計である食道下神経節の神経分泌細胞を駆動し,ここからさらに種々な生体機能のリズムが発動されるという説を発表した。この説はサーカディアン・リズムの体内時計が中枢神経系内に存在することを示した初めての実験として大きな反響を呼んだ。しかし,Harkerの実験を追試して再現することは不可能であった。
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