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特集 時間生物学の新たな展開
藍色細菌の生物時計の分子機構―時計遺伝子クラスターkaiABCのサーカディアン発現の自己制御
Molecular Mechanism for the Circadian Clock in Cyanobacteria: Feed-back Autoregulation of the Circadian Expression of the Clock Gene Cluster kaiABC
石浦 正寛
1
,
近藤 孝男
1
Ishiura Masahiro
1
,
Kondo Takao
1
1名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻分子遺伝学講座
pp.212-220
発行日 1999年6月15日
Published Date 1999/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901696
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ヒトも含めた多くの生物の生命活動はほぼ24時間周期のリズム(サーカディアンリズムあるいは概日性リズムと呼ぶ)を示し,これらのリズムを制御する共通の「生物時計」の存在が想定されてきた。1980年代に突然変異体を分離して,遺伝子から時計の本体に迫ろうとする分子遺伝学的研究がアカパンカビやショウジョウバエで始まり,これまでにショウジョウバエやアカパンカビ,哺乳動物,藍色細菌(シアノバクテリアあるいはらん藻とも呼ばれる)で生物時計遺伝子がクローニングされており,特に哺乳動物の生物時計遺伝子が最近発見されたことにより,この分野の研究が一気に活発になりつつある。しかし,生物時計の分子機構の解明はまだ始まったばかりである。
われわれは生物時計の効率のよい実験系を新たに藍色細菌で開発し,生物時計の中核機能を担う生物時計遺伝子クラスターkaiABCのクローニングに成功した。この総説では,まず藍色細菌の実験系を簡単に紹介し,次にkaiABCのクローニングとその遺伝子発現制御について述べたい。kaiABCの一連の解析により,kaiABCの遺伝子発現そのものがサーカイディアンリズムを示し(サーカイディアン遺伝子発現と呼ぶことにする),その発現はkaiABCの遺伝子産物であるKaiA,KaiB,KaiCタンパク質によって自己制御されていることが判明した。このkaiABCのサーカーディアン自己発現制御系が時計の中核そのものと考えられる。
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