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特集 サーカディアンリズム—基礎から臨床へ
サーカディアンペースメーカー—仮説と現実
A Circadian Pacemaker in the Suprachiasmatic Nucleus
井上 慎一
1
Shin-Ichi T. Inouye
1
1三菱化成生命科学研究所
1Mitsubishi-Kasei Institute of Life Sciences
pp.7-14
発行日 1989年1月15日
Published Date 1989/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204641
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I.はじめに
生物の内部環境及び外界への行動は,程度の差はあっても,皆昼夜変動を繰り返している。この現象の基礎には,24時間を測っている体内時計と呼ばれるものが存在していることがようやく多くの人に認識されはじめている。体内時計の知識は広い応用範囲を持っているが特に医学の分野でも体内時計の性質をうまく用いることができれば,健康の増進や治療の効率化に結びつくことが期待されている。
基礎生物学としてのサーカディアンリズムの研究は1960年から70年代にかけて活躍したPittendrighとAschoffというこの分野の巨人の業績に負うところが大きいし,今もって彼らが作った枠組みに照らしてものを考えている。この論文ではPittendrighとAschoffの枠組みをまず説明し,現実の生理学的研究からそれがどこまで検証され,どこから未知のままで残されているかを私なりにまとめてみた。驚いたことにまとめてみると,神経生理学の実験手段によって実証された事実ははなはだ少なく,PittendrighとAschoffの空想は既に遥かに先にあることを思い知らされることになった。逆に言えば,既に無条件で信じていることでも実験的証拠は乏しく,改めて検討する余地のある概念も少なくない。
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