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I.総 論
嗅覚をつかさどる神経系は,脊椎動物では鼻腔にある嗅細胞から始まる。鼻腔の内面は呼吸上皮のほかに,感覚上皮である嗅上皮でおおわれているが,嗅上皮を構成する細胞のうち,嗅細胞がニオィを受容し,電気的な信号—インパルスに変換する働らきを持っている。嗅細胞の中枢端は,きわめて細い(直径0.1〜0.2μmの)無髄神経となって,頭蓋骨の一つ(ヒトでは篩骨)を貫いて,頭蓋腔に入り,嗅球—第一次嗅中枢に終る。嗅球より出る神経線維は,旧皮質paleocortexに属する,いわゆる嗅皮質(olfactory cortex)に終る。嗅皮質とは嗅球より線維を受ける脳の部分で,前嗅核,嗅結節,前梨状皮質,内嗅野,扁桃周囲核,扁桃核群を含む領域である(Pribram and Kruger, 1954)。
これらの部位から出る神経線維は組織学的には脳の各部に投射することが知られているが,それらのうち,どれとどれが嗅覚性であるかという問題は電気生理学的にも,また行動学的にもひとつひとつ調べて確かめなければわからない問題である。そこで,本綜説では,とくに嗅皮質から出る嗅覚経路については,われわれの研究室で行なわれた電気生理学的研究の成果を中心に述べることにする。というのは,サルやウサギについて新皮質の嗅覚野を発見し,そこに到る経路を追求している研究室は,世界中他にどこにもないからである。
In mammals excepting higher primates and man, dual olfactory pathways have long been suggested by neuroanatomists: one starts from olfactory epithelium through olfactory bulb (OB), prepyriform cortex (PPF) and mediodorsal nucleus (MD), reaching orbitofrontal cortex (OFC), and the other from vomeronasal organ through accessory OB, medial cortical amygdaloid nuclei and stria terminalis, terminates in anterior and medial hypothalamus, preoptic and septal nuclei.
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