研究のあゆみ
群馬大学における嗅覚の神経生理学的研究の30年—私の選んだ道
高木 貞敬
1
Sadayuki F. Takagi
1
1群馬大学医学部第2生理学教室
pp.67-79
発行日 1984年2月15日
Published Date 1984/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904566
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研究の発端—序にかえて
私が昭和29年10月,シカゴに行き.ガラス管微小電極の考案者として当時誰一人知らない人のなかったDr. R. W. Gerardの研究室に到着すると,そこには現九州大学教授の大村裕君が先に行っていて,一緒に研究することになった。Gerard教授から与えられたテーマはカエルの嗅球に現われる不規則な脳波が1滴のニコチン液(0.1〜0.5%)によって6/secの規則的な律動波に変わるが,この現象のメカニズムを彼の微小電極を用いて解明せよというものであった。この研究は1938年以来J. Neurephysiol,その他にLibet & Gerardの名で発表されていて,その頃には大変有名な研究であった。早速2人でやってみると,人間の脳波で言えば,β波がニコチン液でたちまちα波に変化するといった見事な現象が起こった。そこで,その後の約10カ月間,表面の脳波と嗅球内の細胞活動との間の相関を調べたが,ある程度の成果を得たところで中断し,遂に論文としてはまとまらなかった。しかし,この研究が私のライフワークを決定することになった。そこで昭和32年3月,帰国して群馬大学に赴任し,新設の第2生理学教室で嗅上皮の電気活動の研究を開始した。現時点で回顧すると,今までに行われた研究は四つに区分できる。
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