Japanese
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特集 COVID-19と腎臓病
【実際の対処とトピックス】
嗅覚異常とその再生機構
Olfactory dysfunction due to SARS-CoV-2
岸本 めぐみ
1
,
近藤 健二
1
KISHIMOTO-URATA Megumi
1
,
KONDO Kenji
1
1東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
キーワード:
新型コロナウイルス
,
嗅覚
,
再生
,
SARS-CoV-2
Keyword:
新型コロナウイルス
,
嗅覚
,
再生
,
SARS-CoV-2
pp.275-279
発行日 2022年1月25日
Published Date 2022/1/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000000047
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Ⅰ 嗅覚器の構造と機能
哺乳類の嗅覚系は主嗅覚系と副嗅覚系(鋤鼻系)から成る。前者は主に匂い物質,後者は主にフェロモンの受容にかかわっている。副嗅覚系は一部の霊長類には存在せず,ヒトの鋤鼻器は退化していると考えられている。主嗅覚系は,匂い物質を受容する嗅神経細胞が存在する嗅上皮,嗅神経の投射先となる嗅球,嗅球からの投射先となる嗅皮質から成る(図1)。ヒトの鼻腔は鼻中隔と鼻甲介によって上鼻道,中鼻道,下鼻道に分けられる。嗅粘膜は上鼻道のさらに上部に位置し,篩板,鼻中隔の上部,および中鼻甲介と上鼻甲介に至る約10cm2程の領域に存在する。嗅粘膜は嗅上皮とその下に存在する粘膜下固有層から構成されている。嗅上皮は嗅神経細胞,支持細胞,基底細胞で構成されている。嗅神経細胞層には未成熟(基底側)状態から成熟(鼻腔側)状態まで,さまざまな分化状態の細胞が存在する。粘膜固有層には血管,嗅神経束,ボウマン腺が含まれている。ボウマン腺の機能は,線毛の保護,匂い物質の輸送,抗菌タンパク質の分泌による粘膜感染の予防,化学物質の生化学的解毒,などが明らかになっているが,いまだに不明な点が多い。
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