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I.はじめに
人間はきわめて柔軟な学習・記憶能力を有する。これは,脳の神経回路網の可塑性に基づくと考えられる。外界の情報構造に合わせて自己の構造を変えていく系を,自己組織系と呼ぶが,神経回路綱は自己組織系の模範的な例として,古くから工学者の関心を集めて来た。神経回路網の自己組織について,生理学的に実証されていることはいまだに多くないが,その基礎はHebbなどの提唱したシナプスの可塑性にあると信じられている。
自己組織神経回路網の工学的モデルは,この種の可塑シナプスを用いて,これまでに多数提案されている。入力信号を識別分類する学習モデルであるパーセプトロンは,誤り訂正学習法によりシナプス荷重を修正する。最近提案された連想記憶や概念形成のモデルでは,相関学習法や直交学習法によって,シナプス荷重の修正を行なう。また,視覚系(とくに異常環境下での)の形成に関する生理実験をもとにして,特徴抽出細胞の形成のモデルや,これを一般化した情報処理機構の自己形成のモデルが,教師信号なしの学習法を用いて提案されている。これらのモデルは,次の三つの目標を持つといえよう。1)現実の神経回路網の情報処理動作を予見すること。2)有用な自己組織系の工学モデルを提供すること。3)自己組織系の工学理論の建設に役立つこと。
Abstract
It is widely believed that self-organization is realized in the brain based on plastic changes in synaptic weights of nerve cells. The brain is indeed a good example of the self-organizing system, and various models of self-organizing systems have been proposed so far by the use of neuron-like elements with modifable synapses.
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