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特集 小脳研究の課題(2)
小脳の新しい学習機構:運動学習の記憶痕跡のシナプス間移動による記憶の固定化
A new cerebellar learning mechanism:transsynaptic transfer of memory trace of motor learning
永雄 総一
1
Soichi Nagao
1
1理化学研究所 脳科学総合研究センター 運動学習制御研究チーム
pp.34-41
発行日 2012年2月15日
Published Date 2012/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101257
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日常用いる運動の技の大部分は,訓練を積み重ねることによって脳が学習し記憶したものに由来する。子供のときに何日もかけて訓練し自転車に乗れるようになると,生涯にわたって乗ることができるのがその典型例である。訓練を繰り返すことによって脳に学習が起こり,運動記憶が形成され,それがさらに長期記憶に固定されて使われる。Marr-Albus-Itoの仮説1-3)は,運動記憶のもとになる運動学習の原因が小脳皮質の神経回路のシナプス伝達可塑性であることを示唆するが,眼球反射の適応や瞬膜反射の古典的条件付けを使った実験結果の多くはこれを支持する。さらに,筆者は最近,新たに眼球反射の長期適応のパラダイムを開発し,数時間の学習により小脳皮質に形成された運動記憶の痕跡は,学習を繰り返すと小脳皮質の出力先である前庭(小脳)核の神経細胞に移動し,長期記憶として保持されることを発見した。本稿ではこの記憶痕跡のシナプス間移動について解説する。
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