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精神疾患は,1950年代にserendipitousに見いだされた治療薬の薬理作用から“うつ病のモノアミン仮説”,“統合失調症のドーパミン仮説”が提唱され,それから病理機構の解明に向けた具体的な取り組みができるようになったとも言える。しかし,その後順調に発展できたわけではなく,ゲノム科学や神経科学,モデル動物研究の裾野の広がり,イメージングテクノロジーの進歩など,周辺科学や学際分野の進展によって,1990年代ごろから急速に知見が集積してきたように思う。
本特集では,現時点までに蓄積された生物学的エビエンス,疾患解明の切り口,期待できる治療戦略,今後の展望に至るまで,各分野のエキスパートに丁寧に解説していただいた。物事の本質に辿り着くためには,“森も見て木も見る”ことが大切であると思われる。精神(神経)疾患の理解,想定される分子病理に対して,俯瞰に重点を置いた総説,できる限り分子・生理の連鎖まで踏み込んだ総説,その両方のバランスを取った総説のそれぞれが本特集には揃っており,読者の理解に役立つことが期待される。疾患の発症には遺伝的素因(G),生育環境(E),それらの相互作用(GxE)が寄与する(その他に“偶然”も)。よってテーマとしては,原因の最上流に想定されるゲノムに重きを置いて,田渕,仲西・内匠,廣井,近藤・池田・岩田,池亀ら,加藤(忠),塚越・西道の諸先生が執筆してくださった。環境,あるいは原因と結果(疾患)の間にある“中間表現型(シナプス・回路を含む)”を主に意識した総説は,河西ら,相澤,宮本・鍋倉,加藤(隆)・神庭,那波・湯川,古屋敷の諸先生方が執筆してくださり吉川・前川も加えさせていただいた。GxEは各総説にちりばめられている。
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