特集 腸管の吸収機構
特集「腸管の吸収機構」によせて
星 猛
1
Takeshi Hoshi
1
1東京大学医学部生理学教室
pp.2-3
発行日 1983年2月15日
Published Date 1983/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904497
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腸管吸収に関する名著として有名なT.H.Wilson著のIntestinal Absorptionが1962年にSaundersから出版された当時,腸管吸収に関するそれまでの主な研究法であった腸管部分の管内灌流法の外に,当時としては新しい反転嚢法,リング標本による組織内蓄積観察法による研究成果が多く紹介された。その本では糖,アミノ酸その他若干の物質について明確に能動輸送による吸収機構が存在することが示され,当時としては画期的な内容であった。しかし当時はまだ腸管吸収の研究も組織レベルのものがせいぜいであり,物質輸送の詳かな機序については殆ど未知であった。それから約20年経った今日,腸管吸収の機序に関する知識は飛躍的に増大し,多くの物質について膜レベルあるいは更に分子レベルでの説明が可能な段階にまで進んで来ている。
近年の腸管吸収に関する知識の飛躍的発展に大きく寄与した研究を幾つか挙げる事が出来るが,中でも重要な研究はCraneらの有機溶質(主として糖)の能動輸送のNa+依存性に関する研究,それを基にしたNa+との共輸送,二次性能動輸送の概念の確立,更にはCraneらの研究室で主としてEichholzらによってなされた上皮細胞の膜成分の分離と各種膜酵素の同定,局在の決定などである。
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