特集 神経学における最近の研究
<臨床>
重症筋無力症—受容体疾患としてのとらえ方
高守 正治
1
1長崎大学医学部第一内科
pp.823-824
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904948
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神経筋接合部の疾患である重症筋無力症の発症機序を,神経終末側に求めるか,筋肉側アセチルコリン受容体(AChR)に求めるかは,ながらく議論のあるところで,従来は前者presynaptic theoryが有力であった。ところが,AChRとのみ特異的に結合する蛇毒(neurotoxins)の発見と,AChRを大量にもった動物の存在を足がかりとした受容体蛋白研究の飛躍的進歩は,免疫学の発展とあいまって,本病の原因を筋肉側に求めるpostsynaptic theoryを有力なものとして来た。すなわち,病理組織学的に本病神経筋接合部の主病変が終板膜にあるとする報告,アイソトープでラベルした上述の特殊な蛇毒を指標として本病筋のAChR数が減少しているという報告をはじめとして,薬理・免疫学的立場から本病を一つの受容体疾患とする考え方を支持する動物疾患モデル,AChRを攻撃する体液性因子,胸腺・細胞性免疫と受容体異常の関連などにつき,近年活発な研究が行なわれている。以下にわれわれの研究成果をも含め,現在認識されている本病の病因・病理を概説する。
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