特集 神経学における最近の研究
<生化学>
ニューロンとグリア細胞の分離とそれらの生化学的特徴
永田 豊
1
1名古屋保健衛生大学医学部生理学教室
pp.701-704
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904900
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脳を構成している主な細胞はニューロンとグリア細胞で,その形態や機能が違うようにそれぞれの物質代謝系もまた当然異なることが予想される。脳の生化学的研究は,従来脳全体あるいはその一部の組織を実験材料として分析が行なわれてきたが,その中に含まれるニューロンとグリア細胞との割合は決して一様ではない。したがって得られる結果は両種の細胞の平均値を示すのみで,これを直ちに脳機能と結びつけて論ずることはできない。そこで,脳組織よりニューロンとグリア細胞とを分離して取出して各々の生化学的特徴を調べることにより,より脳機能と直接的に関連した変動をとらえることが必要となる。
しかしながら,ニューロンもグリア細胞も複雑に分岐した細胞突起をからませて混在しており,また両者はきわめて狭い細胞間隙を隔てて接しており,かつニューロン細胞体や樹状突起表面には多数のシナプス結合が付着しているので,両種の細胞をまったく傷つけずに完全な形で取出すことは不可能である。そうはいっても,多少傷ついた状態ででも脳からニューロンとグリア細胞とを分離して取出して生化学的分析をすることができれば,従来の脳全体の分析結果に比べてはるかに機能と結びつく物質変動を知ることができよう。このような考えから,脳組織からニューロンとグリア細胞とを分離する方法が工夫されてきた。これらの脳細胞分離については,すでに現われた総説に詳しく紹介されているので参照されたい1〜4)。
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