Japanese
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特集 第34回脳のシンポジウム
神経幹細胞
グリアおよびニューロンへの分化を制御する遺伝子(抄録)
Glia vs. neuronal fate decision in Drosophila: glial cells missing gene expression in neuronal stem cells
堀田 凱樹
1
Yoshiki HOTTA
1
1国立遺伝学研究所
1National Institute of Genetics
キーワード:
Stem cell
,
Neuron
,
Glia
,
Drosophila
,
Asymmetric cell division
Keyword:
Stem cell
,
Neuron
,
Glia
,
Drosophila
,
Asymmetric cell division
pp.886
発行日 1999年12月10日
Published Date 1999/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901110
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- Abstract 文献概要
分子発生生物学と遺伝学の技法を高度に応用できるショウジョウバエを用いて,神経系の細胞分化・神経回路形成の分子機構を解析する。本講演ではその研究から最近われわれが明らかにしたニューロンとグリアとが共通の幹細胞から分岐する分子機構について報告する。
ショウジョウバエのニューロンとグリアとはいずれも神経幹細胞から形成される。われわれが発見したgcm(glia cells missing)突然変異体ではすべてのグリアがニューロンとなり,反対に遺伝子導入法によって神経幹細胞でこの遺伝子を強制的に発現させると,すべてのニューロンがグリア細胞となる。したがってgcmはニューロンとグリアとの間の分化運命を決定するスイッチ遺伝子である。gcmの産物GCMには既知の蛋白質とのホモロジーはなく,そのC末にはATGCGGG(T/C)の8塩基と特異的に結合するDNA結合領域(gcmモチーフ)をもつ新しいタイプの転写調節因子である。実際,gcmで活性化されるrepo遺伝子の上流にはこの標的配列が10個タンデムに存在する。神経幹細胞がグリアをつくる細胞とニューロンをつくる細胞とに「不等分裂(非対称分裂)」する際に,このgcm遺伝子はまず分裂前の幹細胞内でmRNAが合成され,分裂に先だって細胞質の片側に偏在するようになり,その結果分裂後片側の娘細胞に局在するようになる。その細胞ではGCMが合成され,その子孫はすべてグリア細胞となることが示されている。
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