Japanese
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はじめに
失語症が脳の器質的損傷に基づいて生ずる症状群であることは一般に承認されている。したがって,失語症研究の出発点をまずその臨床像(失語症状)の観察と脳剖検所見(脳損傷部位)との照応に求めることは異論のないところである。しかし,失語症研究の歴史では,失語症状と脳損傷部位とは必ずしも対応せず,仮に対応があったとしてもそれで失語症状のすべてが説明されるものでないことが示されている。失語症状という時間的に変化する機能的概念と脳剖検所見という空間的に固定された構造的概念を同一平面で論じようとすることにはどうしても無理が生ずる。従来,失語症状の分析や類型化および剖検所見との対応関係の説明にはその時代の支配的な心理学,言語学,哲学,生理学,生体物理学などの近接科学の諸方法論が導入されてきた。これらの方法論に墓づく失語症状の分析や解釈が「局在論」と「全体論」に集約される2つの相対立する失語症理論として現在にいたるまで展開されていることは承知のところである。
The literature on the autopsied cases of aphasia in Japan for the past 88 years (1887-1975) was reviewed, and the relations between the aphasic symptoms and the sites of the lesions in the brain were studied. In Japan, extremely few reports of the aphasia with the autopsied findings (26 reports containing the autopsied findings among 1,194 reports on aphasia, 2.2%) were previously reported.
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