Japanese
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特集 中毒性脳障害—第4回脳のシンポジウムより
B・有機水銀中毒と脳障害
〔指定討論〕先天性水俣病の実験的発生
Cerebral lesion produced by the organic mercury compound transmitted through the placenta and the mammary gland in rats
立津 政順
1
,
高木 元昭
1
,
宮川 太平
1
,
住吉 司郎
1
,
弟子丸 元紀
1
Seijun Tatetsu
1
,
Motoaki Takagi
1
,
Taihei Miyakawa
1
,
Shiro Sumiyoshi
1
,
Motoki Deshimaru
1
1熊本大学医学部神経精神科
1Dept. of Psychiatry, School of Med., Kumamoto Univ.
pp.130-134
発行日 1969年4月25日
Published Date 1969/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904589
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I.緒言
水俣地区に集団発生した有機水銀中毒症は,発症が生後1年以内の場合を先天性もしくは胎児性の,それより後の場合を後天性の水俣病として区別される。前老の臨床像は,重症の知能障害・寡動‐多動・小脳症状・斜視・流涎・姿態変形などからなり,特徴的である2,10)。これが有機水銀中毒によるものであろうということが,疫学的調査結果2,10)・患者の頭髪3,5)や脳9)の水銀含有量が異常に大であること,オートラジオグラフィーを用いての動物実験1,4,6,7,8,11)などから推測された。武内ら9)は,これら患児の脳所見として,小脳症と全白質・脳梁・錐体路などの形成不全その他を挙げている。森川7)はBis-ethylmercuric sulfideを妊娠中連日投与されたネコから生まれた子に,小脳の発育障害・顆粒細胞の著明な脱落を認めた。しかし,この子ネコの大脳・小脳の髄鞘はほぼ完成の所見を示していたという。この点では,先天性水俣病患者脳の所見とは異なつている。以上のような状況にあつて,胎盤経由の有機水銀中毒によつて実際に胎児脳に器質性傷害が起こるかどうかの証明の必要性が感じられた。
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