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特集 パーキンソニズム(第4回脳のシンポジウムより)
運動制御と抑制性ニューロン
The Role of Inhibitory Neurones in Motor Control
伊藤 正男
1
Masao Ito
1
1東京大学医学部第二生理
12nd Dept. of Physiology, Faculty of Med., Univ. of Tokyo
pp.944-949
発行日 1968年12月25日
Published Date 1968/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904561
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I.緒言
ニューロン間結合を司るシナプスに3種の機能的に異なるものがあることが明らかにされたのは比較的最近のことである。その一つは図1に示すように興奮性であり,シナプス前インパルスの作用はシナプス後部の細胞に興奮性シナプス後電位EPSPを発生させ,その興奮に導くものである。その二はシナプス後抑制性と呼ばれるもので(図1),抑制性シナプス後電位IPSPはEPSPと拮抗してシナプス後部細胞の発火をさまたげるように働く。第三はシナプス前抑制性シナプスでこれは興奮性シナプス上に更にシナプス結合をする所謂synapse onsynapseの構造をしており,興奮性シナプスの働きを抑制するものである(図1)。温血動物の中枢ではこの抑制は興奮性シナプスのシナプス前終末を脱分極させることにより効果を現わすもので,一次求心線維の終末に生ずるこのような脱分極はPAD(primary afferent depolarizationの略)と呼ばれている(図1)1)。
これら3型のシナプスは何れも化学シナプスで,その活動は化学伝達物質の働きによつて中介されている。注意せねばならないのは,伝達物質の種類とシナプス機能の間に一意的な関係がないことである。たとえばアセチルコリンは運動ニューロンの軸索終末から分泌されて筋の終板や脊髄内レンショウ細胞に働く時は興奮性であるが,迷走神経終末から分泌されて心筋に働く時は抑制性である。
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