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特集 てんかん
てんかんの社会精神医学—小児を中心として
Some Social Psychiatric Considerations of Epileptic Children
橋本 禎穂
1
Y. Hashimoto
1
1神戸大学医学部精神神経科
1Dept. of Psychiat., School of Med., Kobe Univ.
pp.737-742
発行日 1968年10月25日
Published Date 1968/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904540
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I
てんかんは特徴的な型の発作を主症状とする脳疾患であるという疾病学的立場をとり,てんかんの治療の主流をなすものは薬物療法であるとみれば,てんかんに対する社会精神医学的接近の余地は少ないであろう。しかし,てんかんの病理解剖学的所見にこの疾患の本態を発見することができず,てんかんの予後についても明るい材料がそろつていない今日の状況では,治療者の態度は微妙である。治療の主流が薬物療法であるとしても,治療の現実は薬物療法を中心とする治療者の態度(Einstellung)にかかつており,さらに患者の環境が種々の形で治療状況を有利にし,あるいは暗いものとしている。患者の環境をぬきにしてはてんかんの症状,経過,予後などを検討することが困難であることは,てんかん患者の社会医学的接近を必要とする一つの根拠である。ことにてんかん患児は親またはこれに代わる人びとに伴われて通院している者が多く入院患児でも直接,間接に家族またはその他の保護者に包まれた状況にあるのが一般であるから,てんかん児の治療には少なくとも身体―心―家族(Leib-Seele-Familie)を一体としてみることが不可欠である。患児にはそのほか福祉,教育などの問題が関連しているため,問題は医学の面にとどまらない。しかしここでは精神医学の問題に限定して検討をすすめたいと思う。
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