特集 第7回神経病理学会
一般演題〔1〕〜〔102〕抄録・討論
〔54〕〜〔58〕膠原病
〔54〕精神神経症状を伴つた結節性動脈周囲炎の1剖検例,他
福永 昇
1
,
大塚 良作
2
,
鳥居 方策
2
,
伊崎 公徳
2
,
八木 英夫
2
1東邦大病理
2金沢大神経精神
pp.793-796
発行日 1966年12月25日
Published Date 1966/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904379
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症例は36歳の男子。扁桃腺炎にしばしば罹患した。昭和39年5月より手関節,腓腸筋に自発痛があり,ステロイドを使用したが軽快せず,6月下旬には上腹部痛,全身倦怠などを訴えるようになつた。8月初めより視覚性の錯覚および幻覚が現われ,ついで,けいれん発作を起こし,さらに左片麻痺,高度の意識障害が加わり,8月14日全経過約3カ月,精神神経症状が現われてから約10日間の経過て死亡した。末期の髄液検査ではグロブリン反応が強陽性であつた。CRPテストも陽性を示した。
病理所見:一般臓器では,実質に貧血性硬塞,潰瘍形成などがみられ,その他各臓器に共通して,局在した小動脈に結節性動脈周囲炎の像がみられた。脳では,右半卵円中心に大きな軟化巣があり,これは前後に拡がつて中心部は物質欠損をきたしているが,左半球のほぼ対称部位にも軟化巣と皮質にもおよぶ出血巣が点在する。鏡検すると,脳血管の変化は実質内の小動脈ないし細小動脈の中膜壊死で,細胞浸潤や,本疾患に特徴的とされる小肉芽形成もみられ,病像の異なるものが,混在している。軟化巣周辺の小壊死巣は,病変血管を中心に漿液滲出を伴うものが多い。また皮質では,変化した動脈を中心にLezithinolyseの像を呈する小脱髄巣がみられた。
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