特集 脳のシンポジウム
主題 脳と行動
指定発言 薬物作用は動物の学習または行動経験によつて変型される
島本 暉朗
1
1京都大学医学部薬理学
pp.486
発行日 1966年10月25日
Published Date 1966/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904329
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学習ないし過去における行動経験の意義が最近二,三の点について生理学的立場から脳構造と機能と関連して脚光を浴びるようになつてきた。すなわち,1)学習はある種の神経細胞においてdendriteの新生を促進しその他細胞との機能的結合を高めること,および,2)学習は神経細胞において学習経験と関連した機能を示すRNAを生化学的に合成するということである。しかし,これらの知見も可能性が提示されたに過ぎないのが現状であるが,われわれはある種の薬物作用が過去の学習獲得によつて変型するという事実に遭遇したので,その大要を述べて批判に供するしだいである。
実験および学習条件は簡単なものである。Wistar系雄ラットを2群に分けて,動物は個々の檻に収容して飼育した。第1群の動物には粉末飼料と水とを自由に摂取せしめた。第2群の動物では水は自由に与えたが,飼料は午前9時より11時まで,および午後2時より4時まで,すなわち午前および午後各2時間のみ自由に摂取せしめた。このように飼料摂取時間を制限すると初期には動物は十分に飼料を摂取しえず,ためにその体重増加は第1群のそれにおよぼない。しかし,このような制限を2週間ほど強制する動物は第1群とほぼ同様の飼料摂取/動物/日と体重増加を示すようになつた。
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