Japanese
English
特集 脳のシンポジウム
主題:脳研究の方法論をめぐつて
—生化学の立場から—脳の生化学的研究
Biochemical Method on Brain Research
塚田 裕三
1
Yasuzo Tsukada
1
1慶応大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Keio University, School of Medicine
pp.18-25
発行日 1966年3月25日
Published Date 1966/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904258
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
脳の営む機能がいかに複雑なものであつても,その機能の基盤をなすものは脳の中で生起する化学的な変化によるものであることは,今日疑うものはない。しかしながら脳の機能を客観的に定量化することが困難である現在これを支える化学的過程を追求することに多くの困難を伴う。このような条件のもとで最近臨床医学,基盤医学の両面から神経系の化学的な研究を目的とした"神経化学"なる新しい分野が台頭してきている。これは脳の持つ機能があまりにも複雑であり,かつ又特殊なものである為に,これにたちむかう化学的方法も又特殊化されざるを得ないこととなり,この学問分野が生まれることとなつたと考えられる。
事実脳は摘出したり,血流を遮断したりすれば,ただちにその機能を失うのであつて,摘出脳についてその物質代謝を調べる場合には,もはや機能はまつたく失われた条件でしか研究することができないことを覚悟しなければならない。このほか脳は固い骨におおわれていることやまた特に脂肪含量の高い組織である点など考えると一般生化学の研究材料としてはきわめて不適当なものといわざるを得ない。したがつて脳を材料とした生化学的研究では常に脳の機能との関連においてその化学的変化がとらえられねばならないことになる。このような点を考慮しながら現在行なわれている脳の生化学的方法について解説してみたいと思う(第1表)。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.