脂質代謝異常による中枢神経障害

Studies on the Central Nervous System Disturbance caused by the Lipid Metabolism Disorders

I．緒言

　脳の脂質代謝に関する研究は近年著しい進歩をとげ，脳機能や代謝における脂質の役割も次第に明らかにされつつある。脂質代謝の異常によつて起つてくる疾患は多いが，脂質が中枢神経系に多量に沈着してくる疾患を"Cerebral lipidosis"と呼んでいる。

　これに属する疾患は　1. Amaurotic Family Idiocy家族性黒内障性白痴　2. Niemann-Pick病　3. Gaucher病　4. Gargoylismの4者である。さらに最近は汎発性硬化症や多発性硬化症などの脱髄性疾患に脂質代謝の異常のあることが注目されてきつつある。