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表題のVBAC(ブイバック)とは,vaginal birth after Cesarean sectionの略語で,前回帝切例の経腟分娩という意味です。帝切率減少作戦という旗を掲げて世界中を講演なさって歩かれたドイツのザーリング教授も,前回帝切妊婦を何とかしてすべてを帝切例にしないで経腟分娩可能なケースにはやってみようと提唱されました。そこで,このVBACという言葉ができて,各施設で試みられるようになり,「Once C-section is always C-section(一度帝切したら常に帝切)」という言葉が忘れられようとしています。しかし,前回帝切したケースを今回は経腟分娩でということになると,少なからず危険はあります。したがって,十分な管理,監視体制のもとで実施されなくてはなりません。その要点を今月の話題にしました。
VBACといっても,前回の帝切の内容で行なえない場合もあります。骨盤の変形などで帝切した症例などではVBACはできません。また,前回の帝切が陣痛発来前の殊に早産期である場合,たとえば妊娠33週,PROM(早期破水)で足位のため陣痛発来前に帝切にしたというような症例やまた,妊娠中毒症で妊娠30週で胎児仮死のため帝切となったケースでは対象にはなりません。こんな症例では子宮口は開大せず,初産のままのような状態で今回の分娩を迎えるので,分娩時間も長時間になるだろうし,相当の困難が予測されるので,特に気をつけなくてはいけません。それに比べて,前回は子宮口は全開大近くまでいったが,どうしても生まれなくて帝切したというような症例では,前の場合より分娩は早く進行するので行ないやすいでしょう。ですから,VBACではまず症例が経腔分娩可能かどうか見きわめることです。また,前回2回以上続けて帝切した産婦ではVBACはすすめません。
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