Japanese
English
Medical Essay
失語症巡礼—その2 ダクス父子とソンミエール
Pelerinage d'aphasiologie. Chap. 2. Sommieres, la ville des Dax
岩田 誠
1
Makoto IWATA
1
1東京大学医学部脳研究施設神経内科
1Department of Neurology, Institute of Brain Research, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.396-399
発行日 1975年4月10日
Published Date 1975/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903722
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モンペリエ医学部
バルセロナの神経学会を中途で抜け出し,一目散にフランス領のナルボンヌ(Narbonne)に舞い戻ったのは,一刻も早く,Dax父子ゆかりの地,ソンミエール(Sommieres)とモンペリエ(Montpellier)を訪れるためであった。まだまだうだるように暑い9月14日の朝,この町の古いカテドラルのわきにある安宿を出て,まだ朝のうちにモンペリエの町に入った。この町の誇りである医学部(Facultede Medecine)は1221年の創立というから,すでに7世紀半の歴史を持つ驚くべき伝統の代物である。観光案内を見ると必ず出てくるのは,かの有名なラブレー(Rabclais)がここにて医学を修めたということである。そして,ここのところとみに名を高めた大予言者ノストラダムス(Michel de Notredame)もこの医学部出身の医学博土である。しかし,私にとって何よりもまず重要だったのは,今を去る139年前の1836年7月,この1地方都市の医学会において,言語機能と左大脳半球を結びつけるという,当時としては,正にコペルニクス的展開ともいうべき大発表が,Marc Daxという一介の田舎医者によったなされた(いやなされようとした)ことであった。
彼Marc Daxが果たして本当に口頭発表を行なったか否かは今日疑問であるとしても,モンペリエ医学会と失語症とのつながりは,私たちにとっては切り離すことのできぬものである。
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