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はじめに
多発性硬化症(以下MSと略す)は,その病因も病理発生もまだ不明である。病因を解く一つの手掛りは,本症の特有な疫学的パターンであり,もう一つは,髄液(以下CSFと略す)γ-globulinの増加,血清中の脱髄抗体,末梢血リンパ球にみられる中枢神経組織成分に対する遅延型過敏症,血清およびCSFのある種のウイルス抗体価の上昇など,免疫学的異常所見の存在である。これらの知見は,一方ではなんらかの感染因子,とくにウイルス感染の関与を示唆し,他方免疫学的諸成績は,あくまで間接的なものではあるが,その病理発生になんらかの自己免疫的プロセスが関与していることを推定させる。
最近のMSの病因についての一般的な見解は,ウイルス感染か自己免疫かというような二者択一的なものではなく,ウイルス感染が引き金になり,それによって惹起された免疫学的異常反応がその病理発生にかかわっているのであろうとされている。
Neither the etiology, nor the pathogenesis of multiple sclerosis (MS) has been revealed. The two most vital clues to the causation of MS are the characteristic epidemiological pattern of the disease, and the presence of such immunological abnormalities found in the MS patients, as frequent elevation of gammaglobulin in the cerebrospinal fluid (CSF), demyelinating antibody in the serum, delayed hypersensitivity to brain tissue antigen, and the elevation of the serum antibody titers to several viruses.
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