Japanese
English
特集 三叉神経系
歯髄の感覚情報
Sensory informations from the dental pulp
堀内 博
1
Hiroshi HORIUCHI
1
1東京医科歯科大学歯学部第三歯科保存学教室
1Department of Endodontics, School of Dentistry, Tokyo Medical and Dental University
pp.1035-1041
発行日 1974年12月10日
Published Date 1974/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903681
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歯科を訪れる患者の約6割は口腔領域の痛みを主訴としている。そしてこれら痛みを主訴とする症例のなかで最も頻度の高いものは歯髄に由来する痛みである。それゆえ,歯痛は多くの歯科医にとって興味の対象となり,さまざまな角度から検討がなされて来た。
痛みは歯髄感覚の主なものであり,いろいろなエネルギー形態を持つ刺激はいずれも歯痛を起し得る。たとえば,温度変化や電流の通過,あるいは象牙質に加わる圧力や糖液の接触などはいずれも充分な大きさであれば痛みを起す。これまで多くの人たちは歯髄の感覚は痛みだけであるとして来たが,Shimizu1)は電気刺激を歯牙に与えたとき閾値近傍で最初に起る感覚は痛みとは異なる特殊な感覚であることをみて,これに"pre-pain"と名づけた。そしてpre-painが生ずる刺激の強度を約30%増加すると初めて痛みが起ると報告している。Shimizuは歯髄に分布する神経線維のスペクトラムのなかでもとくに太い線維がpre-painの生起に意味を持っているのではないかと示唆している。一方,温度変化が歯牙に加わるとき痛みの感覚が生ずるに先だって温度感覚が起るとの意見もあるが,歯肉など歯周組織で起る温度感覚と区別することが難しく確証が得られるまでには至っていない。
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