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特集 小脳
大脳から小脳へのニューロン回路—小脳前核の生理学を中心に
Cerebrocerebellar pathways: Mode of transmission in the precerebellar nuclei
大島 知一
1
Tomokazu OSHIMA
1
1東京大学医学部第一生理学教室
1Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.850-856
発行日 1973年10月10日
Published Date 1973/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903546
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I.はじめに
大脳から小脳へのニューロン回路に対する生理学者の関心の一つは,この回路が筋肉運動の発現と維持にどのような役割を果たすかという点に集約される。大脳と小脳のニューロン集団間の連結は両方向性であり,両者は互いに神経性情報を送受しうるので,ここに大きなループ回路が構成される。このようなループ系の機能を究めるための初歩段階として生理学者は因果分析的な研究方法をとり,回路構成素子となる神経核ニューロンを分類しそれぞれの担いうる神経性情報の伝達様式を明らかにしていく。そこで動物(サル,ネコ,ウサギなど)を用いた急性実験が行なわれる.この動物実験でえられた知見が原則的にヒトでもあてはまるかどうかは研究対象に対する比較生理学的判断による。最大の大脳性入力をうける小脳部位は系統発生上比較的新しい領域の小脳両半球であり,ここはヒトの全小脳中最大の容量を占める。大脳性入力の役割は進化の過程で次第に重要性を増し,温血動物からヒトにいたってその極に達したと考えれば,大脳小脳連関系において動物とヒトを結ぶ視点がえられるであろう。高等動物における小脳両半球の量的増加は,大脳性入力を運ぶ神経路,とくに橋核の発達と対応している。
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