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特集 神経疾患と脂質代謝
細胞下レベルおよび細胞レベルでの脂質分析
Lipid composition of subcellular and cellular (neuron perikarya and glial cells) preparations
駒井 裕一
1
Yuichi KOMAI
1
1新潟大学脳研究所神経化学部門
1Dept. of Neurochemistry, Brain Research Institute, Niigata University
pp.454-465
発行日 1973年6月3日
Published Date 1973/6/3
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903510
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Ⅰ.序文
近年,生化学的分析手段の発達と相まって,脳の化学的諸性質が明らかにされてきた。脳の生化学的分析を行なうとき,全脳および解剖学的局所部位を用いて大まかに脳の特徴を推定したり,あるいは細胞下分画法の開発により種々の細胞構築物(ミトコンドリア,シナプス膜および小胞,核,ミエリン,ミクロゾーム)を分析することにより,脳の機能と化学物質との関係が一層明瞭なものとなった。最近,神経系統,とくに脳の複雑な機能の主役を演じている神経細胞あるいは神経膠細胞をなるべく無傷のまま採り出し,おのおのの細胞について生化学的分析を行ない,それらのデータを集積し,その解釈により脳の機能を理解しようとする試みがなされている。このような観点から,当研究室では佐武を中心に神経細胞の種々の生化学的分析が行なわれてきた。とくに,脂質分析に関しては細胞下分画法および下等動物(アメフラシおよびザリガニ)の神経組織を用いての傍証的実験結果を加味し,神経細胞の脂質組成の特微を明らかにした。そこで,本稿では,1)脳灰白質,白質,2)細胞下分画,3)細胞(神経細胞および神経膠細胞)レベルでの脂質組成の特徴について,当研究室のデータ(Tamai, Matsukawa, Komai and Satake)を中心に,かつ文献的集約を加えながら述べてみたいと思う。
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